抄録
これまでの伝統的工芸品産業が、デザインを取り入れることができなかったことについては、産地が形成されてきた経緯のなかで、高度な社会分業体制が構築され、新たな業務に対する柔軟性を失ったことが原因として考えられる。また、明治以来、製造業の社会的地位が低く見られるようになり、職人が手作業労働者に位置づけされたために、職入のなかからデザイナーを養成する余裕もなかったことも要因にあげられる。デザインを取り入れるためには、現在の製造システムを大幅に変革し、合理化する必要性があるが、その効果は大きいことが示唆された。それは、製品の価値を拡大するだけでなく、製造従事者の社会的地位や労働の魅力を向上し、伝統的工芸品産業自体を再生するものである。また、デザインを産地内に定着させるためには、産地の特性に適したカリキュラムを有する教育の場が必要であり、地方公設試験研究機関や大学などがその役割を担うことが期待される。