2014 年 61 巻 2 号 p. 2_27-2_34
本稿は、京都高等工芸学校図案科における図案教育とデザインの現場への波及の実態を明らかにする研究の一環として、1908(明治41)年に同科を卒業した水木兵太郎著作の図案集『アブストラクトパターン』(芸艸堂刊)について、モチーフ、色彩、レイアウト方法といったグラフィックデザインの側面から分析し、その特質を明らかにすることを試みた。
分析の結果、水木の図案制作における特徴を次の3点に結論付けた。①数理的・幾何学的な画面構成。②補色の関係を多用した配色。③円と正方形を基本単位とし、その相似形による面の分割。以上から、当図案集で水木が、数学的に秩序立てた制作方法をとっていたことを明らかにした。
また、同時代の著作物であるM.P.ヴェルヌイユ著作の『Kaleidoscope』との比較を通して、当図案集への影響とともに、日本で早い時期にアール・デコや構成主義を受容し、図案における抽象表現として提示したものであることを指摘した。