2014 年 61 巻 2 号 p. 2_35-2_38
人が自然発生的に生み出してきた形の一つであると言える民具形態に注目し,その形に潜在すると思われる力学的合理性を解明することを研究目的として,新潟県中魚沼郡の津南町歴史民俗資料館に所蔵されている踏鋤の一種である国指定民俗資料「エングワ」の形状に見られる力学的特徴の抽出を試みた。生活の中に置いて自然発生的に生み出されてきたと思われる形態の特徴の一つと言える力学的な合理性の有無についての検討をこのエングワ形状に対して実施した。三次元デジタイザによる形状測定,CADによる断面形状の検討,有限要素法に従った構造解析,梁理論に従ったエングワ形状と曲げモーメント分布,および曲がりにくさの指標となる断面二次モーメントとの対比を通して,この形状が実使用時に発生すると思われる力学的および幾何学的境界条件に対して適切な形状を有しており,この形態が力学的合理性を有しているものの一つであることを確認した。