抄録
本稿は,台湾における大甲藺工芸産業の変遷をまとめるとともに,それに関与した人びとの活動を明らかにすることを目的としたものである。調査・考察の結果,大甲藺工芸産業の発展は,以下の5つの時期に分けることができた。(1)黎明期:1729~1895年頃に相当し,大甲藺工芸の原型となった編みの技術が,生活者の手によって創出された時期である。(2)発展期:1895~1903年頃に相当し,大甲藺工芸の産業化のみならず,当該地域の総合的な生活の向上に地元の郷紳らが大きく寄与した時期である。(3)最盛期:1903~1942年頃に相当し,大甲帽子の生産がピークを迎えた時期である。(4)衰退期:1943年より始まった第二次世界大戦を経て,産業としての大甲藺工芸が大きく衰退した時期である。(5)復興期:1994年の社区総体営造の開始から現代までの時期に相当する。大甲藺工芸産業の成立と発展は,地域の人びとの内発的な活動を促すとともに,それに支えられつつ展開されたことが示唆された。