2017 年 64 巻 3 号 p. 3_61-3_70
ユーザエクスペリエンス(UX)は,ユーザとプロダクトとのインタラクションにおける諸体験について議論する概念であり,近年,プロダクトがユーザにもたらす満足を追求する上で注目が高まっている。特に,家電製品等,市場で成熟したプロダクトを扱うデザイン現場では,ユーザに新しい価値を提供しうるプロダクトの創出を狙いとして,このUXの概念の導入を模索している。このような背景に鑑み,本研究では,プロダクトのUXを,そのデザインプロセスにおいて予測的かつ定量的に評価する手法の開発に挑んだ。UXは,多様な要因の影響を受けるため,一定の不確実性を含むことを前提としなければならない。そこで,自作のスマートフォンアプリケーションを用いるなどして,20代~70代までの多様なユーザから11,698件のデータを収集し,確率論的アプローチによって,どのようなインタラクションがどのようなUXの側面を生み出すのかを推定するモデルを構築した。このモデルを用いて,家電製品のUX評価を実践するとともに,実務者及び実ユーザの参加による検証実験によって手法の妥当性を検討した。