2021 年 67 巻 3 号 p. 3_39-3_48
本研究では,主となる図柄などの情報を引き立てる目的をもって,その周囲を縁取る形で施される装飾を「フレーム(Frame)」と呼称する。日本において平面作品にフレームが使用され始めたのは,西洋諸国との貿易が開始された明治時代である。本研究では,明治時代の日本の商標・ラベル・パッケージを収集した後,フレームの造形要素と表現のみに注目し,モチーフに応じて分類を行い,①植物,②動物,③道具,④幾何学に区分した。さらに,明治時代のデザイン運動の流れと商品についての関係に加え,商品別のフレームデザインの分類と傾向を分析した。その結果,明治日本においては植物をモチーフとしたフレームが最も多く制作されたこと,商品の販路の国内外別によって好まれた表現に違いがあることが確認できた。フレームデザインの中には身近な日本の植物や和柄,日本独自の家紋が取り入れられている例も多く,日本人が外来の概念であったフレームを吸収し,独自に発展させていたことを明らかにした。