デザイン学研究
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使用過程に基づく不便益の性質把握と分類
―不便益性を持つ事物のデザイン方法の探求として
前川 正実
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2021 年 67 巻 3 号 p. 3_9-3_18

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抄録

 本稿における研究の目的は,不便な事物が使用される理由,そこから得られる益の性質,そして不便益性のある事物のデザイン検討に求められる要件のいくつかを明らかにすることである。その手段として,不便益性を持つ「素数ものさし」が使用される様子の観察,ヒアリング,内面観察等を通して,使用過程のユーザーの思考と行動を把握し分析と考察を行った。その結果,以下を示すことができた。不便益は企画者やデザイナーが事物に組み込んだ副目的の達成過程で生じる。副目的の設定は不便益性のある事物の企画とデザイン検討における要点である。事物が不便であるのに使用されるのは,ユーザーの思考や行動を引き起こす要素が組み込まれているためである。不便益は由来と性質により三種類に分類できることが示唆された。その一つ目は,安心感,楽しさ,充実感等の根源的満足である。二つ目は,思考や行動を方向付けて実行する態度等を獲得し強化する益である。三つめは,当該不便の克服に必要な知識や具体的なスキルを獲得し強化する益である。

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© 2021 日本デザイン学会
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