2021 年 68 巻 1 号 p. 1_11-1_20
三菱電機における情報通信システムのデザイン開発事例を用いてデザイナーの役割の変化とデザイン方法論(デザインアプローチ)の変遷に関し、参与観察手法を用いて歴史的な視点から分析、考察する。企業内デザイン組織が出来たのは 1970 年代であるが、この時代はスケッチやモデル製作が中心であった。1980 年代に、コンセプトを重視した提案型アプローチの研究が始まった。1990 年代になるとバブルが崩壊し、製品がユーザーに与える価値から考え直さなければ売れなくなった。そのため、技術研究部門においてゼロルック VA という価値を重視する手法が始まり、デザイナーとの本格的な共同研究(携帯端末関係)が始まった。2000 年代になると、公共事業の公募においても、将来提案や独自の付加価値を含めた提案が求められるようになってきたため、実案件(成田空港デジタルサイネージ等)へのデザインアプローチの適用が進んだと考えられる。