2021 年 68 巻 1 号 p. 1_39-1_48
本論文では,「再発見」したクリストファー・アレグザンダーの博士論文『THE SYNTHESIS OF FORM; SOME NOTES ON A THEORY』と『形の合成に関するノート』との比較分析を行った。分析の結果,パターン・ランゲージの理論的背景・哲学的背景にとって,以下の重要な知見が明らかになった。(1)アレグザンダーは,博士論文から『形の合成に関するノート』を出版するために,いくつかの加筆修正を行っており,博士論文と『形の合成に関するノート』には重大な相違点が存在する。(2)アレグザンダーは,ロス・アシュビーの『頭脳への設計』にもとづく「システムの定義」を削除してしまっており,アレグザンダーの理論はシステム理論として捉え直す必要がある。(3) アレグザンダーの博士論文には,「参考文献」がある。その中では,ジョージ・ミラー他『プランと行動の構造』が重要視されており,その影響は大きい。(4) カール・ポパーの『開かれた社会とその敵』も同様に,「参考文献」の中で重要視されている。ただし,ポパー哲学を徹底的に研究した痕跡が博士論文・『形の合成に関するノート』両方に認められるが,博士論文全体に影響があったかどうかは疑問が残る。