2022 年 68 巻 3 号 p. 3_63-3_72
本研究は,ビジョニングを,創造的認知研究で議論される想像の応用として捉えた上で,ビジョニングがアイデア創造性の実現に効果的であるときの説明を試みた。ビジョニングの認知プロセスとは,ビジョンの想像と製品の想像からなることを前提とした上で,225 人の経営学部生によるアイデア開発結果を分析し,次の知見を導いた。
アイデア創造性の実現に直接的に起因するのは,製品想像時に,開発対象分野から意味的に遠い関係にあるビジョンを用いたときであり得る。さらにその開発対象分野から遠い関係にあるビジョンの特定に起因するのは,①開発対象分野から遠い関係にあるものをヒントとしてビジョンを想像したとき,②具体的にビジョンを想像したときであり得る。
本調査結果から,アイデア創造性の実現を意図するビジョニングの際には,できるだけ開発対象分野から遠いものをヒントとしてビジョンを想像すること,あるいはできるだけ具体的にビジョンを想像することが推奨される。