2025 年 71 巻 3 号 p. 3_71-3_80
本研究は、地域住民の語りからサイトスペシフィックアート作品が地域に与えた影響を明らかにし、地域芸術活動への深い関与と理解を促すための新たな視点を提供した。越後妻有および瀬戸内直島地域の地域芸術活動及びサイトスペシフィックアート作品に着目し、地域住民間で共有される象徴的な風景イメージを明らかにするための風景イメージスケッチ手法(LIST)を用いて、住民の語りという視点からインタビューを組み合わせたミックス的な分析方法を通じて、地域芸術活動の受容を考察する可能性を模索した。調査を通して、住民と芸術活動との関わり、印象に残る作品のイメージと特徴を明らかにした上で、住民の語りから地域芸術活動の「参加」という側面が徐々に軽視される傾向にあることが分かった。これからの地域芸術活動には、地域固有の特性を深く掘り下げ、住民に現状の「参加」よりも深い関与の機会を提供する必要があると考察した。