2025 年 72 巻 1 号 p. 1_57-1_64
手間や労力がかかる体験の中にある益である「不便益」は,ユーザーの属性や状態次第で、その手間や労力をネガティブに感じる「不便“害”」となってしまう場合がある。本研究では,製品側がユーザーに委ねる操作や調整への介入度合い(余白の大きさ)と,それらの介入を受け入れるユーザー側の許容量(余白の許容量)の関係性を整理することが,適切な不便益をもたらす製品やサービスの創造につながるという仮説を立てた。そして,ユーザーが介入できる余白を残した製品のサンプルとして,その日の気分や服装に合わせて好みの色や柄に自身で着彩できる白磁器アクセサリー『ironna』を創出した。次に,介入できる余白の大きさが異なる3種類のironna を用いて使用感アンケート調査を行った。結果,「介入に対する好き嫌い」と,そのユーザーが好む「余白の大きさ」には正の相関の傾向があり,双方の大きさが合致した時に,手間や労力をポジティブに感じる,主観的不便益がもたらされる可能性を確認した。