2011 年 17 巻 4 号 p. 44-53
コミュニティのコミュニケーションのような複雑な人々の活動を支援する道具・システムを適切にデザインする方法であるAPBD手法(Activity Pattern-Based Design Method)を提案し、その有効性と課題を、この手法の開発経緯と適用した実際のデザイン開発の経緯から検討した。今回対象とした活動は、大学におけるデザインの学びと地域の町内会活動である。APBD手法は、活動の捉え方としては(1)対象となる活動の全体をとらえる、(2)活動に関係するすべての人間を捉える、(3)関係者のリテラシーを十分考慮する等の点で、また道具・システムの作り込みの方法としては(1)プロセスの中で適切な開発目標の設定とそれに対応したデザインが行われる、(2)主となる機能を早い段階で実装し、使用しながら磨いていくための絞り込みができる等の点で優れていると考えられる。一方、主な課題としては、活動に投入してみなければわかりにくい運用・管理面での予測への対応、質の高い開発を行うために、個々の開発だけではなく、活動をその目的や内容の類似性から「活動のパターン」として捉え、開発結果とセットにして共有し、改善していく方法の開発等が挙げられる。