日本の 1980 年代から現在までの小学校における環境教育に見られる環境思想の変遷の特徴を,平成 4 年,平成 19 年,平成 26 年に発行された『環境教育指導資料』の小学校編をもとに調査・分析した。その結果,(1)3版共通して環境教育の理念として扱われている人間中心主義的な環境思想である「環境の保全」における「持続可能な開発」の内容に変遷が見られ,改訂ごとに持続可能な社会の構築のための視点が広がり,現在は特に環境主義的な環境思想である「環境的公正」が「持続可能な開発」と同義に扱われている,(2)環境主義的な環境思想である「地球の有限性」,および,「生物多様性」の視点が,H19 版以降,小学校における環境を捉える視点の一つとして扱われている,(3)日本的自然観である「自然との調和」という概念が,小学校理科,生活科,道徳における環境教育の指導の視点として3版ともに重視されているが,道徳においては,「自然との調和」を考える視点としての「倫理」の表記が,「環境倫理」から「自他の生命を尊重する視点」に変わったことが明らかとなった。