PISA調査等の国際調査が普及している現代においては,数学を用いて現実をよりよく生きぬくリテラシーの重要性が主張され,各国のカリキュラムにも影響を与えている.他方,社会を取り巻く数学は,量・質ともに高度に発展してきている.こうした現代に生きる子ども達は,既有の数学的概念では向き合えないような場面に数多く遭遇することが予想され,取り巻く状況を切り拓き,現実の問題を解決していく力を培っていく必要があると考える.そこで本稿では,現実の問題に対して既有の数学的概念だけでは解決できない場合にこそ,新たな数学的概念が形成されるとする島田(1977)の主張に依拠し,新たな概念が形成されるプロセスを概念の外延と内包の視点から捉えなおすことで,そのプロセスを明確化することを目指した.その結果,既有概念の否定を契機として新たな数学的概念が形成されるプロセスが明らかにされ,作用する否定の連続的な変化を提示することができた.