2020 年 35 巻 2 号 p. 35-38
薬剤耐性対策は喫緊の課題であり,解決に向けて教育と啓蒙に取り組むべきとされるが,アンケート調査の結果から岩手大学教育学部生の多くはこれに関連する知識を持っていないことが分かった.現状と取り組むべき課題を認識させるために,岩手大学教育学部生のスマートフォン画面の薬剤耐性因子の調査を行った.45台のスマートフォン画面からサンプリングし,抗菌薬(アンピシリン,テトラサイクリン,ストレプトマイシン,リファンピシンのいずれか)を含む培養液で培養した結果,14台(31%)について微生物の増殖がみとめられた.これらの内3台のスマートフォン由来の試料についてはテトラサイクリンを含む培養液で微生物の増殖がみとめられ,DNAを解析したところ,テトラサイクリン耐性因子であるtet(K)が検出された.本報告の結果は薬剤耐性菌が身近に存在していることを示しており,教育学部生が現状を把握し,薬剤耐性対策の重要性を理解する契機になると考える.