2022 年 36 巻 7 号 p. 61-64
現在,日本の多くの小学校の理科授業では,帰納的推論が用いられた授業が行われている.しかし,帰納的推論は実験から児童がきまりを見つけることができず,正しい法則を発見することができず,科学的概念を形成することができない場合がある.対して,演繹的推論はきまりを実験の前に学習するため,正しい法則を知ることができる.しかし,法則を学習する際に教え込みに近い授業になってしまう.そこで私たちは演繹的推論を活かして児童に正しい知識を身に付けさせるとともにZPDを活かした授業を考案する.教え込みではなく児童の経験や既習事項を基に実験・観察から児童がきまりを発見していくという流れをたどる授業を考案した.質問紙調査から,児童は普段から演繹的推論を用いた考え方をしていること,ZPDを活かした授業を好んでいることが明らかとなった.質問紙調査をもとに,小学校第5学年「ものの溶け方」において演繹的推論とZPDを活かした授業を考案した.