抄録
岡山県真庭市の蒜山原に分布する中部更新世の堰止め湖の堆積物である蒜山原層は年縞珪藻土が特徴である.年縞は各々異なる浮遊性珪藻で構成された明緑色と暗緑色の葉理のセットからなり,多くの重力流堆積物が挟在する.本研究では,挟在する重力流堆積物の堆積相と,年縞層厚およびこれらの層序的変化を検討した.その結果,年縞層厚は珪藻の生産もしくは珪藻殻の大きさの増加を示唆する上方層厚化傾向を示すこと,重力流堆積物は,層相,連続性,含まれる珪藻種などに基づき,洪水流起源および斜面崩壊起源のものに分類できることが明らかになった.洪水流起源の堆積物はハイパーピクナル流,ホモピクナル流もしくはハイポピクナル流堆積物の特徴を示し,これらの挟在頻度は気候を反映したものと推定される.一方,崩壊起源の堆積物は,湖底斜面崩壊によって発生した重力流により形成されたと考えられ,リップアップクラストを持つものと塊状のものに分けられる.リップアップクラストの淘汰が悪いことは,斜面に近いプロキシマルな環境での堆積が示唆される.これらは解析層準の上部と最下部では低頻度で,スランプスカーの多い下部では高頻度で挟まれる.