堆積学研究
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懸濁下層流による「鞍部越え」の機構
カナダの氷河湖・ペイトー湖
知北 和久スミス N. D.米光 昇ペレス=アルルーチェア M.
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1995 年 42 巻 42 号 p. 11-20

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抄録

氷河によって涵養される湖, カナダ・ペイトー湖において, 懸濁下層流 (Sediment-Laden Underflow or River-Induced Turbidity Current) のあるユニークな挙動について, その物理機構を調べた。湖盆形態の特徴として, この湖は中央部に約7m高の鞍部を持ち, 以前の著者らの研究では, 懸濁下層流がこれを乗り越え, より遠方に堆積をもたらすことが示唆された。しかし, 懸濁下層流の駆動力は, 本来, 重力の下り斜面方向成分のみであり, 1993年氷河融解期 (7月23日-8月7日) の調査では, この「鞍部乗り越え」がいかなる機構で起こるかが調べられた。ここでは, 流入河川の土砂流出, 気象条件, 湖流および湖水の温度・浮遊物質濃度を連続的に観測した。結果として, 懸濁下層流の挙動に関し, 次のような新たな知見が得られた。
(1) ある臨界土砂流出量 (河川流量Q=7-8m3/s, 流入水の浮遊物質濃度SSC~0.6g/L) 以上で, 懸濁下層流が連続的に発生し前方最深部に到達する。しかしこの時下層では, 上層の吹送流 (Wind-Driven Current) を補償する, 懸濁下層流とは逆向きの流れ (Compensation Current) が生じ, その作用によって懸濁下層流の推進力は急激に弱められる。この時, 両者の衝突は懸濁水の対流混合を引き起こす。
(2) 結果的に, 前方最深部の底層では懸濁水の貯留が乱流状態で起こり, これは, 上述の土砂流出条件を満たして懸濁下層流が発生・到達する限り継続する。
(3) 最終的に, 貯留された懸濁水の上界面 (Interface) が, 鞍部の頂部を越え, その水塊の密度が進行する底層水のそれより大きければ, 再度懸濁下層流として流下し, 鞍部遠方に堆積をもたらす。

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