2000 年 50 巻 50 号 p. 11-18
四国南西部に分布する三崎層群竜串層下部の浅海成堆積物は, 砂岩泥岩互層部と厚層砂岩部からなり両者が交互に重なっている. これらの堆積物はともに砂岩の内部堆積構造としてハンモッキー斜層理が発達しており, ストーム堆積作用が卓越する浅海域で堆積したとみなされる. 砂岩泥岩互層部は主として細粒懸濁物が沈積する場において, まれに来襲するストームが砂の運搬・堆積作用に重要な役割をはたしていた. このようなディスタルな場に海底砂州が発達し, 厚層砂岩部を形成していった. しかし, この砂州堆積物における砂の集積と成長発達は, 本質的には河口から流れ出す河川流, もしくは河川流と潮汐流の複合によるものであり, ストームは必ずしも砂の主要な運搬・集積には関わっていなかった可能性が高い. 砂州堆積物はストーム時に強い波浪作用によって再動された結果, ストーム期の記録が選択的に地層記録に保存されていったと考えられる.