堆積学研究
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長崎県大村湾の表層堆積物に認められた珪藻被殻の鉛直混合
加藤 めぐみ谷村 好洋松岡 數充福沢 仁之
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2001 年 53 巻 53 号 p. 47-55

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抄録

長崎県大村湾において採取された海底表層堆積物コア試料に含まれる珪藻被殻を分析したところ, 沿岸性珪藻種 Chaetoceros affinis Lauder の非常に脆弱な被殻が表層から深度5cm以浅の層準に認められた. これに対して, 本研究対象地域において多く出現して同様に脆弱な被殻をもつほかの Chaetoceros 属はほとんど認められなかった. この差異を生じた理由を明らかにするために, 堆積物コア試料の層相を詳細に観察して, 1998年6月~翌年6月に実施されたセディメント・トラップ実験から, 珪藻ブルームにともなって起こるそれぞれの珪藻種の沈降時期を検討した. その結果, これらの珪藻種間の堆積物中における保存度の違いは, それらの被殻が海底に沈積して堆積物中に取り込まれてから経過した時間の長短によると推定された. そして, 堆積物コア試料の層相観察と C. affinis の被殻の深度分布によって, 表層から深度5cmの堆積物が鉛直混合を受けていることが明らかになった. そして, この堆積物の鉛直混合によって海底に沈積してから4週間以内に C. affinis の被殻が深度5cmの層準にまで運ばれたと考えられる. また, この鉛直混合のために, 脆弱な Chaetoceros 属の被殻は7~8ヶ月間で破砕・溶解されて堆積物中に化石として残されないことが示唆された.

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© 日本堆積学会
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