堆積学研究
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ヒマラヤチベット高原の隆起, 東アジアモンスーンの発達と東アジア縁海における堆積作用
多田 隆治
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2004 年 58 巻 58 号 p. 57-63

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抄録

構造運動と気候変動のリンケージがどのくらい重要な役割を果たしているかは, 地質学における第一級の疑問であるにも拘らず, 未だ明確な答えが出されていない. 特に, ヒマラヤ-チベット高原の隆起がアジア-インドモンスーンの強化を引き起こしたとする仮説は, その影響の大きさ, 新生代後期の気候進化における重要性から, 構造運動-気候変動リンケージの代表例とみなされている. これまでは, ヒマラヤ-チベット高原の隆起時期や様式, モンスーンの出現時期や発達様式を制約する地質学的データが不足し, また, 曖昧であったため, この仮説を検証できずに現在に至った. しかし, 近年, ヒマラヤ-チベット高原地域の構造地質学的データや東-中央アジア内陸部の古気候データが蓄積し, 気候シミュレーションの速度や解像度が改善されるにつれて, この仮説を検証できる状況は, 急速に整いつつある.
本総説においては, 先ず, ヒマラヤ-チベット高原の隆起時期や様式, アジアモンスーンの出現時期や発達様式に関する理解の最近の進歩について簡単に紹介する. そして次に, 数千年から数万年スケールでのアジアモンスーン変動の出現時期や発達様式とヒマラヤ-チベット高原隆起の関係の重要性について議論し, 最後に, ヒマラヤ-チベット高原の隆起やアジアモンスーンの発達が, 東アジアの縁海に如何に大きな影響を与えてきたかについて紹介する.

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© 日本堆積学会
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