土と微生物
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家畜排せつ物の堆肥化における微生物を用いた臭気低減(環境保全型農業のための微生物利用:複合微生物系における有用微生物の動態と制御,シンポジウム)
黒田 和孝
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2002 年 56 巻 2 号 p. 69-74

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抄録

家畜排せつ物の堆肥化処理は,我が国で最も一般的な処理形態であるが,処理の過程でアンモニアおよび硫黄化合物類を主体とする高濃度の臭気が発生する。この臭気発生は畜産由来の悪臭問題の主な原因となっていることから,有効な対策技術が求められている。堆肥化由来の臭気への対策として,市販微生物資材の添加利用が広く行われているが,効果については曖昧なものも多く,含有微生物や作用メカニズムも殆ど不明である。一方,臭気低減能を有する微生物の研究も行われてきているが,知見の蓄積は多いとは言えず,微生物添加による臭気低減は信頼性の高い技術となり得ていない。筆者らは微生物添加による堆肥化からのアンモニア発生低減を目的として微生物の分離と選抜を行い,高アンモニウム耐性を有する高温性細菌Bacillus sp. TAT105株を得た。この菌を添加して豚ぷんの堆肥化試験を行ったところ,添加区では無添加区に比べて試験期間中のアンモニア発生が低減された。また,TAT105株は堆肥化初期に顕著に増殖した。このことから,TAT105株添加によるアンモニア発生低減の可能性が示唆された。

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