土と微生物
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接種菌をどのように検出識別するか? : アーバスキュラー菌根菌の場合(環境保全型農業のための微生物利用:複合微生物系における有用微生物の動態と制御,シンポジウム)
横山 和平立石 貴浩河野 伸之斉藤 雅典丸本 卓哉
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2002 年 56 巻 2 号 p. 103-108

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抄録

アーバスキュラー菌根菌(以下,AM菌)は,植物への水やリン酸イオンの供給を通した生育促進が期待され荒廃土壌の緑化現場に人為的に導入されている。しかし,従来の形態学的手法では,接種AM菌の土壌中あるいは植物根中での動態を野外において系統レベルで調査することは困難だった。このため,DNAマーカーの利用が検討されてきたが,ヘテロポリカリオンであるAM菌胞子DNAからは大サブユニットrDNAの可変領域やITS領域では多様なクローンが得られ,系統の識別と同定は不可能だった。また,野外での動態解析には植物根中の菌糸DNAの解析も必要であり,植物根DNAの影響を受けやすいRAPDやPCR-RFLPは不適切と考えられ,単一DNA配列をマーカーとして用いる方法を開発する必要があった。今回,Gigaspora margarita MAFF520054株から系統特異的な235bpの配列を検出する条件を確立し,同一系統で既に商品化されているG. margarita CK株にも同配列が存在することを確認した。また,MAFF520054株が感染した植物根からもマーカーを検出することに成功した。この方法により,CK株導入後4年を経過した雲仙普賢岳火砕流跡地のウィーピングラブグラス根圏のG. margarita胞子が導入したCK株であることが確認され,接種菌が現場土壌で定着していることが明らかとなった。また,その様式から,土着AM菌との生態学的戦略の違いを推察した。今回得られた配列は,サテライト配列の一部と推定されたが,上記のような試験の結果,マーカーとして実用的なレベルであると推察された。

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