土と微生物
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土壌細菌における芳香族化合物分解酵素系の多様性(競争的大型資金プロジェクトによる土壌微生物研究最近の成果,シンポジウム)
福田 雅夫宮内 啓介政井 英司
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2004 年 58 巻 2 号 p. 79-86

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抄録

私達は生研機構の新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業である「環境微生物の難分解性芳香族化合物分解能の多様性に関する分子生物学・分子生態学的研究」(平成9〜13年度実施)に参加する機会を得た。環境汚染のバイオ修復への活用をめざし,環境汚染をひきおこす芳香族化合物の分解微生物ならびに分解酵素と遺伝子の構造,機能,発現について研究をおこない,効率的な完全分解酵素システム構築を目標とするプロジェクトで,我々(長岡技術科学大学)の他に,農業環境技術研究所の宮下清貴,長谷部亮,小川直人氏らのグループ,静岡大学農学部の早津雅仁氏のグループが参加した。我々は「多環芳香族化合物分解系酵素の構造と多様性の解明と機能解析」を担当し,グラム陽性細菌のポリ塩化ビフェニル(PCB)分解菌Rhodococcus sp. RHA1株の分解酵素系の多様性と酵素の立体構造の解明を進めた。その結果,分解経路の各ステップに複数のアイソザイムが関わり,これら分解酵素遺伝子の大半がクラスターを形成して線状プラスミド上にコードされていること,二成分制御システムが分解酵素遺伝子群の転写誘導を支配していることが明らかになった。これらの結果からPseudomonas属等のグラム陰性細菌とは異なる戦略にもとづいて分解酵素系を進化させてきたことが想像される。

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