2007 年 61 巻 1 号 p. 3-9
小麦フスマを用いた還元処理土壌より分離した細菌の中から,単独で処理した場合にもトマト萎凋病菌に対し通常の還元処理と同様の殺菌効果を示す3菌株を選抜した。これらの菌株は単独処理しても還元処理土壌に特有の腐敗臭が発生した。また,この腐敗臭を含む還元処理土壌からの気体には,トマト青枯病菌に対しては殺菌的な,トマト萎凋病菌には静菌的な作用が認められた。PCR-DGGE解析により,還元処理土壌中ではKlebsiella pneumoniaeやEnterobacter sp.のような細菌群が優占化していたが,単独で処理した場合に殺菌効果が得られた3菌株由来のバンドも還元処理土壌のDGGEに認められ,16SrDNA配列からこれらの菌株は全てClostridium sp.であることが示唆された。以上のことから,還元処理土壌中における殺菌機構として,トマト青枯病菌に対しては,土着の嫌気性細菌が産生する揮発性物質や有機酸による直接的な殺菌作用が,これに加えてトマト萎凋病菌の場合には,厚膜胞子の発芽や揮発性物質による静菌作用が効果的に作用していることが考えられた。