土と微生物
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土壌および養液栽培へのメタン消化液施用が数種土壌病害発生に及ぼす影響
甘利 誠豊田 剛己Tajul MD Islam増田 和成黒田 哲生渡辺 昭
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2008 年 62 巻 2 号 p. 106-113

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抄録

メタン消化液は今後有効利用が期待される有機物であり,本論文では土耕栽培や養液栽培においてメタン消化液の各種病害に対する影響を評価した。土壌ではメタン消化液の10%(v/w)施用によりトマト青枯病の発病程度が3.3から0,2に低下し,青枯病菌密度の減少や高い微生物活性が認められた。20%施用ではレタス根腐病の発病程度が2.7から1.4に低下した(枯死=4,健全=0)。メタン消化液施用はトマト,レタスいずれの生育も阻害せず,むしろ両作物の生育が良好となった。軽石培地を用いた養液栽培では,トマト青枯病やサラダナおよびホウレンソウ苗立枯病の発病抑制,サラダナ根腐病の発病遅延が見られた。フィルター除菌したメタン消化液それに含まれる濃度と同一濃度のアンモニアや酢酸を混合した寒天培地では青枯病菌やレタス根腐病菌の生育が有意に抑制され,メタン消化液中の化学成分が病害抑制に直接関与している可能性が示唆された。これらの結果より,メタン消化液は土壌病害抑制資材として,また有機質肥料としての機能を有することが推察された。

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