土と微生物
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有機農業実践圃場と慣行栽培圃場のリン脂質脂肪酸の実態
浦嶋 泰文中嶋 美幸金田 哲岡田 浩明長谷川 浩村上 敏文
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2009 年 63 巻 2 号 p. 55-63

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抄録

有機農業を実践することにより土壌の生物性が改善されると言われているが,その科学的根拠は明確ではない。そこで,有機農業実践圃場と慣行栽培圃場の土壌微生物群集構造をPLFAにより解明することで,その実態を明らかにし,有機栽培と慣行栽培でPLFA組成に差違があるのか検証した。福島県会津地方および山形県のミニトマト産地において,有機栽培および慣行栽培を行っている農家の雨よけハウスを3年間調査した。調査した3年間のいずれも,有機栽培と慣行栽培農家圃場の土壌中のPLEA含量,多様性指数H'および指標脂肪酸の割合についても有機栽培と慣行栽培の間で顕著な差異は無かった。PLFA組成に基づきクラスター解析した結果,有機栽培と慣行栽培の間で土壌微生物群集に顕著な違いは認められなかった。RDA解析した結果,PLFA組成は土壌化学性に大きく影響を受けており,土壌養分集積が土壌微生物群集構造が変化するひとつの要因であることが推察された。またRDA解析により,有機栽培と慣行栽培の要因が有意に関与しておらず,有機栽培と慣行栽培ではPLFA組成は有意に異なるとは言えなかった。このように,有機栽培と堆肥等の有機物を施用している慣行栽培農家との間で土壌微生物群集構造には差違が認められなかった。

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