土と微生物
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糸状菌細胞に内生する細菌の存在とその検出法
佐藤 嘉則成澤 才彦西澤 智康小松崎 将一太田 寛行
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2011 年 65 巻 1 号 p. 49-54

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抄録

近年,糸状菌の細胞内部に内生する細菌の検出例が報告されている。例えば,Rhizopus属菌の菌糸内部に分布する内生細菌は,これまでRhizopus属菌が生成すると考えられていたリゾキシンを生成することが明らかとなった。このような背景から今後,糸状菌を扱う研究全般において内生細菌の検出が重要な試験項目のひとつになると考えられる。本稿では,糸状菌細胞内生細菌の検出方法として,グラム陰性細菌の細胞壁成分のひとつであるエンドトキシンの定量による内生細菌の検出法,細菌16S rRNA遺伝子を標的としたPCR法による内生細菌の検出,蛍光顕微鏡および透過電子顕微鏡を用いて,菌糸内に分布する内生細菌を直接観察する方法について,筆者らの手法を中心に既往研究を加えて解説した。本稿で紹介した検出方法は透過電子顕微鏡観察を除いて,比較的簡易であることから,糸状菌の細胞内生細菌の分布調査に広く活用されることが期待される。糸状菌細胞内生細菌および共生体(共存体)の土壌における生態学的役割については今後の研究課題である。

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