土と微生物
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土壌微生物研究におけるモデル基質としてのグルコース利用 : 研究事例と今後の展望
沢田 こずえ豊田 剛己
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2013 年 67 巻 1 号 p. 32-38

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抄録

将来の気候変動下における土壌炭素循環の予測不確実性を解決するためには,土壌中での微生物を介した炭素循環メカニズムを解明することが重要である。これまで,土壌中で微生物が取り込む基質の主成分であるグルコースをモデル基質として用い,微生物メカニズムを解明する研究が発展してきた。本稿では,微生物がグルコースを吸収して増殖する期間とグルコースが微生物に吸収された後の期間に分けて,研究事例を紹介した。グルコース吸収期間において,バイオマス炭素の半分以下の低濃度のグルコースを添加後のCO_2放出速度はミカエリス・メンテン式に従うことが分かった。また,バイオマス炭素以上の高濃度のグルコースを添加後のCO_2放出速度の経時変化から,(1)土壌微生物をr戦略微生物とK戦略微生物に分けられること,(2)様々な生態系における窒素・リン制限についての情報が得られることが分かった。グルコース吸収後の期間においては,微生物の代謝回転速度とプライミング効果についてまとめた。プライミング効果の大きさを決定する要因として,添加基質炭素濃度と可給態窒素量が考えられた。今後の展望としては,微生物バイオマスの群集組成に着目した研究の発展が望まれる。

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