土と微生物
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作物根圏における窒素と微生物の相互作用(シンポジウム「微生物の機能を環境にやさしい作物生産に活かす」)
南澤 究包 智華板倉 学
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2013 年 67 巻 2 号 p. 49-53

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抄録

肥料削減は持続的農業の一つの目標である。窒素条件を変化させた水田に栽培したイネ植物体に生息している細菌群集構造の解析を行った。その結果,低窒素環境で特定の細菌群の相対存在比が上昇した。機能遺伝子として,メタン酸化や植物ホルモン関連遺伝子の相対存在比が低窒素環境で上昇した。これらの結果は,低窒素環境がイネ根の共生細菌群集を形作る鍵因子であることが分かった。イネの共生遺伝子が低窒素環境でメタン酸化依存的な窒素固定を制御している可能性が示唆された。ダイズ根粒はN_2Oを吸収する能力が高いにも関わらず,圃場環境ではマメ科作物根圏からN_2Oが発生するという矛盾に関心を持ち,分子生態学的な手法によりN_2O発生機構の解明を行ってきた。その結果,老化根粒では根粒タンパク質を物質的な起点とする一連の食物連鎖と窒素形態変化(根粒タンパク質→アンモニア→亜硝酸→N_2O)の中でN_2Oが発生すると考えられた。また, N_2OからN_2への還元はnosZ+根粒菌が担っており,根粒根圏から発生したN_2Oを吸収しN_2に還元するため, nosZ+/nosZ++根粒菌接種により根圏全体のN_2O発生が削減できることを室内実験および圃場レベルで明らかにした。

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