土と微生物
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温室効果ガスと土壌微生物
妹尾 啓史
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2015 年 69 巻 1 号 p. 10-15

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抄録

農耕地土壌は,温室効果ガスの一つでありオゾン層破壊作用も有する一酸化二窒素(N_2O)ガスの大きな発生源である。肥料に含まれる窒素が土壌微生物による形態変化を受けてN_2Oが生成する。土壌においてN_2O生成や消去に関わる鍵微生物を特定・分離・解析することはN_2O発生削減技術の基盤として重要である。農耕地土壌のうち水田からはN_2Oがほとんど発生しない。これは水田土壌の高いN_2生成型脱窒活性に由来すると考えられた。土壌DNA解析(Stable Isotope Probing,メタゲノム解析等)と分離培養法(Functional Single Cell分離法)から,長らくブラックボックスのままであった水田土壌の脱窒菌群を明らかにした。一方,畑土壌からのN_2O発生が著しい。粒状有機質肥料を土壌に施用した際のN_2O発生原因微生物の特定を試みた。肥料を土壌に表面施用した際には主に糸状菌脱窒によりN_2Oが発生した。土壌DNA解析と分離培養法から,土壌でN_2O生成を実際に担っている糸状菌を特定した。N_2OをN_2に還元する能力の高い脱窒菌を利用してN_2O発生削減と植物生育促進の両効果を有する微生物資材の開発を試みている。

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