土と微生物
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土壌の健全性評価 : 米国の有機イチゴ栽培の現場から
村本 穣司
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2015 年 69 巻 2 号 p. 65-74

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抄録

米国カリフォルニア州サンタクルーズ郡は,有機農地率が20%を超える有機イチゴ・野菜栽培の先進地であるが,一部のイチゴ圃場で輪作にも拘わらず土壌病害が発生している。一方,当地の慣行イチゴ栽培では,くん蒸剤への規制強化を背景に,土壌くん蒸に依存しない生産技術が模索されており,土壌の健全性(Soil health)の重要性が認識されつつある。本報では,カリフォルニアの有機および慣行イチゴ栽培における土壌還元殺菌法の最適化に関する研究(2003-)と米国における土壌の健全性に関連した動向について話題提供する。Shennanらは,これまでに土壌還元殺菌法により土壌中のVerticillium dahliae微小菌核を71-100%減少させ,くん蒸剤処理区と同等のイチゴ収量が得られることを実証した。その結果,2014年度には州内計400haの農地で同法が実践されている。しかし,Fusarium oxysporum, Macrophomina phaseolinaによる病害には安定した防除効果が得られておらず,養分動態などとともに研究を継続している。近年持続的農業が探求され,土壌の機能や生産以外のサービスが認識されるにおよんで「土壌の健全性」に関する定義や評価法が議論され,ユーザーと地域性を考慮した各種評価法が開発されている。今後土壌微生物学には「地力」に類似したこの概念のさらなる実態解明とそれに基づくよりよい診断法の開発が期待される。

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