土と微生物
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土壌動物は土壌微生物の機能をどのように引き出すか?
金子 信博
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2015 年 69 巻 2 号 p. 87-92

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抄録

野外での土壌微生物の生態を理解するために,土壌動物の生態をあわせて考慮する必要性についてまとめた。土壌動物は,幅広い分類群を含み,一般に地上の動物に比べて小型であり,土壌微生物の10分の1程度の現存量を示す。微生物は,動物の体の内外を利用して土壌中を移動している。土壌動物は微生物を直接摂食し,微生物の現存量を減少させるが,微生物は摂食に対して物理的,化学的防御を行っている。選択的な摂食による微生物の種構成の変化も重要な意味を持つ。土壌動物の消化管は土壌中で特異な環境を提供し,物質循環に関係している。ミミズの消化管では水分や養分が供給され,土壌と混合されることで嫌気的になり,脱窒が生じている。また,糞は耐水性団粒となり,土壌の機能に大きな影響がある。土壌構造の物理的な改変も微生物の動態を左右している。保全農業では,土壌動物の多様性と現存量の増加が見込まれるので,土壌動物と微生物の相互作用の研究は,今後必要性を増すだろう。

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