抄録
南九州,沖縄地域での被害発生が地域産業に大きな影響を与えているサツマイモ基腐病の防除を目的として,苗床での土壌還元消毒技術を開発した。基腐病に対する土壌還元消毒試験を実施するに当たり,まず,環境マーカーとして利用できる硝酸塩利用能欠損変異株(nit 変異株)を野生株から作出し,生育や病原性の諸性質を調べ,野生株と同等の菌株を選抜した。また,土壌還元消毒による効果を判定するため,基腐病菌nit 変異株を土壌中から検出できる選択培地として,SPDA 培地に塩素酸カリウム,クロラムフェニコール,PCNB を添加したSPDCA-CP 培地を作製した。室内試験によりnit 変異株を接種した汚染土壌に米ぬかを混和して還元処理し,SPDCA-CP 培地を用いた希釈平板法により消毒効果を評価することで,圃場で土壌還元消毒を実施する際の処理の目安を地温30°C 以上で3 週間とした。宮崎県内の現地苗床において米ぬかを用いた土壌還元消毒の実証試験を行い,汚染苗床での消毒終了後に育苗試験により消毒効果を評価したところ,基腐病の症状は確認されず,土壌還元消毒による防除が有効であることを明らかにした。苗床での土壌還元消毒は化学農薬を用いない環境保全型の土壌消毒技術として今後活用できる。