外科と代謝・栄養
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特  集
短腸症候群とシトルリン
東本 恭幸
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2014 年 48 巻 6 号 p. 233-239

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抄録

  シトルリンは肝の尿素回路の中間産物として良く知られているが,生体内で遊離した状態で存在するものはそのほとんどが小腸細胞で生成されたものである.シトルリンは門脈血流に乗って肝臓に運ばれるが,そのまま通り抜け腎臓でアルギニンに変換されて多彩な生理機能を発揮する.アルギニンは小児の成長にとっても欠くことのできないアミノ酸であり,小腸はシトルリンを絶え間なく産生することによってアルギニンの安定的な供給を担っている.それゆえ血漿シトルリン濃度は小腸の機能的なサイズを反映するマーカーとして注目され,短腸症候群における静脈栄養離脱の指標となるのみならず,絨毛萎縮を伴う小腸疾患,抗がん剤治療や放射線治療による小腸粘膜傷害,小腸移植後の拒絶反応,新生児壊死性腸炎からの回復過程などのマーカーとして利活用されている.最近では,小児短腸症候群に対する腸管延長術のひとつである serial transverse enteroplasty の術後や,GLP-2 アナログ製剤の投与によって血漿シトルリン濃度も上昇することが報告されている.

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© 2014 日本外科代謝栄養学会
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