外科と代謝・栄養
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教育講演
栄養を理解するための消化管運動の基礎
持木 彫人
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2017 年 51 巻 3 号 p. 46

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抄録

 消化管運動は摂食前後で明らかに異なる2 つのパターンに区別され、空腹期収縮と食後期収縮に分類される。ひとつは強収縮波群よりなる空腹期収縮であり摂食後8-10 時間目より観察される。もうひとつは摂食後に収縮力は弱いながらも規則的に発生する律動的収縮波群の食後期収縮である。
 空腹期収縮の特徴はinterdigestive migrating motor contraction(IMMC)と呼ばれ、強収縮群が肛門側に90-100 分間隔で規則正しく伝播する。約70-80 分の休止期を経て、約20 分間持続するきわめて強い収縮力を持った収縮波群が胃・十二指腸から始まり小腸を肛門側へと伝播する。このIMMC は生理的には食物残渣や腸管内に溜まった胃液・腸液を肛門側へと排出し、次の食事のための準備をする収縮と考えられ、別名housekeeper contraction と言われている。IMMC は4 期に分類され、最も特徴的なphase III は15 分以上続く強収縮であり、その収縮波群は肛門側へと伝播する。このIMMC は十二指腸から上部空腸に存在する消化管ホルモンであるモチリンによって引き起こされており、血中濃度は周期的に変動し、phase III の時期にモチリンの血中濃度は最高値を示す。
 食後期収縮は食事の摂取によって生じる収縮波で、食後3-6 時間持続する。食事摂取によって、まず胃体部が受容性に弛緩し食物を胃内へと受け入れ、receptive relaxation と呼ばれている。胃体部から胃前庭部の収縮によって食物が徐々に混和、粉砕され、幽門輪を通過する大きさになると十二指腸へと排出される。十二指腸への排出は胃前庭部の収縮、幽門輪の拡大、十二指腸の収縮停止によって調節され、gastro-pyloro-duodenal coordination と呼ばれている。また、食事摂取にともなって、大腸でも収縮が起こり、朝食後の排便などはこの収縮によって惹起され、gastrocolic reflux と呼ばれている。

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