外科と代謝・栄養
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体液代謝管理研究会・日本輸血細胞治療学会コラボセション
アルブミン製剤の適正使用推進に向けた輸血部門による取組み
河野 武弘
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2017 年 51 巻 3 号 p. 56

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抄録

 現在、アルブミン製剤(以下ALB)の使用にあたっては、薬機法と血液法に基づいて様々な施策が講じられており、両法の下で様々な指針、ガイドラインや制度等が行政から通知されている。特に血液法の基本方針では、同製剤の国内自給に基づいた安定供給が目標として明記されており、さらに「血液製剤の使用指針」にて適正使用に関する指針が示されている。わが国のALB の使用量は、かつて世界総生産量の1/3 に達し、その当時の国内自給率は10% を切っていたが、適正使用推進の結果として同製剤の使用量は大幅に減少し、国内自給率も上昇(平成27 年度は56.4%)した。しかしながら、ALBの使用状況においては、現在でも最大で4 倍前後の都道府県格差があることなどから、引き続き適正使用が図られる必要がある。一方、医療機関における適正輸血実施を評価する診療報酬として平成18 年に設置された輸血管理料に関しては、ALB と赤血球製剤の使用量比(ALB/RBC<2)を満たさないことが、輸血適正使用加算を算定できない最も大きな理由となっている。
 ALB の適正使用を推進するにあたり、輸血部門による取り組みのポイントは以下の通りである。まず、ALB の一元管理を薬剤部門から輸血部門に移行し、ALB を輸血用血液製剤と同様の管理体制におくことは、適正使用推進の第一段階として有効である。具体的には、ALB を個別ロット管理し、原則的に輸血部門在庫として病棟での常備配置を廃止すること、診療科別の使用状況を輸血療法委員会等の院内会議で提示することなどが挙げられる。さらに、投与医師による記録(目的、投与前後の検査値や臨床所見に基づいた評価)を徹底させることは、長期的な適正使用推進に効果的である。ALB 発注時や投与後に、適正使用の介入を行うことは有効であるが、医師が期待する投与効果を尊重し、単にアルブミン値のみで投与量を制限することは行うべきではない。自施設が採用している血清アルブミンの測定方法が変更される際には、同一検体のアルブミン値が低く測定され、投与量が増加する場合があることに留意すべきである。
 今春には「血液製剤の使用指針」が「科学的根拠に基づいたアルブミン製剤の使用ガイドライン(日本輸血・細胞治療学会)」に準拠した内容に全面改定される予定であり、輸血部門には同指針を効果的に活用した診療各科への診療支援が望まれている。

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