外科と代謝・栄養
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特集「L-カルニチン欠乏症とL-カルニチン投与の有用性」
腎疾患に伴うL‐カルニチン欠乏症と治療
木村 祐太菅野 義彦
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2020 年 54 巻 2 号 p. 62-65

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抄録

 一般的に, L‐カルニチン欠乏は食事摂取量およびL‐カルニチン産生能の低下した高齢者に生じやすいといわれているが, 若年層においても偏食などで欠乏をきたしうる. 病態別では, 先天性代謝異常症や完全静脈栄養 (total parenteral nutrition : TPN) の患者を始めとして, 非常に多岐に渡る病態で生じうるが, 中でも血液透析患者の約90%はL‐カルニチン欠乏をきたしていると報告されている. 日本小児科学会「カルニチン欠乏症の診断・治療指針2018要旨」では, 血中の遊離カルニチン濃度が20μmol/L未満の場合をL‐カルニチン欠乏症と定義している. L‐カルニチンは脂肪酸のミトコンドリア内への輸送, アシル化合物など過剰な脂肪酸のミトコンドリア外への輸送, 赤血球膜などの細胞膜の安定化などの作用をもち, その補充により透析患者におけるESA抵抗性の改善, 疲労感および筋肉症状の軽減, 左室駆出率 (ejection fraction : EF) の上昇を認めたと報告されている. L‐カルニチン投与の有効性に対する関心は高まっているが, 補充を開始した後の評価方法に関しては現在明確な指標は示されておらず, 患者の状況を総合的に考慮して欠乏状態に応じた継続的な補充が必要とされている.

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© 2020 日本外科代謝栄養学会
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