2020 年 54 巻 3 号 p. 143-146
熱傷や多発外傷, 敗血症といった重症病態では, 健常時と比較して代謝動態は著しく変化する. 侵襲時での炎症性サイトカインや免疫細胞の活性化によって解糖経路の亢進やミトコンドリアの機能不全による酸化的リン酸化の抑制が生じる. このような代謝の変化によってエネルギー代謝の倹約と乳酸の過剰産生が示唆される. また, 代謝動態への影響は糖代謝のみではなくアミノ酸代謝にも及ぶ. 特に分岐鎖アミノ酸 (BCAA) の代謝動態は重要なシグナル因子となっている可能性が考えられる. 敗血症においては, 骨格筋でのロイシン抵抗性が懸念されるが, 一方でロイシンの投与によって骨格筋減少抑制効果があることも報告されている. 重症病態において代謝機構の変化に合わせたエネルギー投与量の調整ともに,アミノ酸代謝の意義を究明する必要がある.