外科と代謝・栄養
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原著(臨床研究)
食道癌における低侵襲手術の導入と ERAS(Enhanced recovery after surgery)による周術期管理の有用性
小倉 正治長谷川 博俊松井 淳一
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2020 年 54 巻 3 号 p. 147-153

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抄録

 高侵襲手術である食道癌手術での周術期合併症を軽減し, 安全かつ迅速に術後回復を促進するため, 低侵襲手術である胸腔鏡下食道切除術の導入とEnhanced recovery after surgery (ERAS) による周術期管理を開始した. 2016年12月より胸腔鏡下食道切除術を開始し, ERASプロトコルの変更を行った. 2016年12月~2019年8月にかけて, 食道癌に対し上縦隔リンパ節郭清を施行した胸腔鏡下食道切除術23例 (VATS群) を対象とし, それ以前に施行した開胸手術55例 (No VATS群) との周術期転帰の比較を行った. VATS群において, 縫合不全は有意に減少し, また, 術後気管内挿管の期間, 集中治療室滞在日数, 経口摂取開始までの日数, 術後在院日数は, それぞれ有意に短縮された. 食道癌手術における胸腔鏡下食道切除とERASプロトコルの変更により, 患者の周術期アウトカムの改善が見込まれると推察された. 治療成績の安定化のため, 食道癌手術におけるクリニカルパスを導入したため, さらにその成果を期待したい.

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© 2020 日本外科代謝栄養学会
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