外科と代謝・栄養
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特集「医工連携がもたらす重度侵襲病態治療の最前線と近未来の治療」
人工赤血球(ヘモグロビンベシクル)製剤による 出血性ショック治療の可能性
酒井 宏水
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2020 年 54 巻 4 号 p. 170-174

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抄録

 現行の献血-輸血システムの安全性はきわめて高いが課題も存在する. 赤血球輸血治療の補完を目的として, 人工赤血球製剤(ヘモグロビンベシクル, HbV)の研究開発が日本で進められ, 間もなく臨床試験が開始されようとしている. 本稿では, これまでに動物投与試験から明らかにされてきた出血性ショック蘇生液としての有効性についてまとめた. 原料となるヒトヘモグロビンの精製工程でウィルス不活化・除去を徹底しているため感染の心配がなく, 室温で長期間備蓄ができ, また血液型がないので交叉試験が不要で, 必要時に即座に投与が可能なので, 救急救命医療に威力を発揮するものと期待される. また, 一酸化炭素を結合したCO‐HbVはCOの徐放効果でさまざまな効能を示し, 新しい製剤として期待されている.

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© 2020 日本外科代謝栄養学会
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