外科と代謝・栄養
Online ISSN : 2187-5154
Print ISSN : 0389-5564
ISSN-L : 0389-5564
症例報告
W‐ED tubeが有効であった幽門側胃切除術後に生じた Roux stasis syndromeの3例
鍵谷 卓司木村 昭利岡野 健介澤野 武行大橋 大成加藤 雅志梅原 豊村田 暁彦高橋 賢一袴田 健一
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 54 巻 4 号 p. 211-215

詳細
抄録

 幽門側胃切除術およびRoux‐en‐Y再建 (以下, R‐Yと略) 後に器質的狭窄がないにもかかわらず胃内容排出遅延が生じるRoux stasis syndrome (以下, RSSと略) では, 治療期間が長期にわたるため, 栄養障害への配慮が必要となる. 今回, Kangaroo™ W‐ED Tube (以下, W‐EDTと略) による保存的治療を行い, 栄養状態を保つことができた幽門側胃切除術後のRSSの3例を経験した. 症例1は76歳女性で, 幽門側胃切除術, R‐Yを施行し, 術後10日目にRSSを発症した. 症例2は47歳男性, 症例3は68歳女性でありいずれも術後8日目にRSSを発症した. いずれの症例もW‐EDTを留置し, 胃減圧と経腸栄養 (Enteral nutrition; 以下, ENと略) を行った. それぞれ, RSS発症後21日, 29日, 63日で経口摂取が再開できた. いずれの症例も, 退院前のControlling Nutritional Status (CONUT) スコアは2以下で推移しており, 栄養障害の増悪は認められなかった. 幽門側胃切除術後に生じたRSSに対して, W‐EDTは1つの鼻腔から胃内減圧とENを行うことで栄養状態を保つことができ, 長期治療において有用な治療であると考えられた.

著者関連情報
前の記事 次の記事
feedback
Top