外科と代謝・栄養
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特集「手術侵襲と臓器不全」
術後臓器不全におけるメディエータ制御
島内 貴弘小野 聡
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2021 年 55 巻 1 号 p. 22-28

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抄録

 手術侵襲後の合併症発生率は術式によって異なるが, 術後のSIRS (systemic inflammatory response syndrome) 合併率, 合併期間によって侵襲の程度を客観的に評価可能である. 術後SIRSの合併率は血中のIL‐6濃度とよく相関する. また術後合併症から臓器不全にいたる過程には, 炎症性サイトカインによって誘導される各種メディエータ, 特に好中球エラスターゼ, High mobility group box chromosomal protein‐1 (HMGB‐1) , Neutrophil Extracellular Traps (NETs) の役割が重要である. これらのメディエータは炎症担当細胞や血液凝固系を活性化し血管内皮細胞傷害を引き起こす. そして最終的には臓器機能不全を発症させる. したがって, 術後臓器不全対策としては, 上記メディエータを制御することが重要であり, 好中球エラスターゼ阻害薬やrecombinant human thrombomodulin製剤などが有望である.

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© 2021 日本外科代謝栄養学会
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