外科と代謝・栄養
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特集「手術侵襲と臓器不全」
術後臓器不全の分類
井上 茂亮
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2021 年 55 巻 1 号 p. 6-10

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抄録

 多臓器不全 (multiple organ failure : MOF) は生命に危機的状況を引き起こす最重要課題で, 予後不良の術後合併症として注目されている. 手術侵襲は,高サイトカイン血症に代表される全身性炎症反応SIRS (systemic inflammatory response syndrome) を引き起こすだけでなく, 抗炎症反応であるCARS (compensatory anti‐inflammatory response syndrome)を誘導し, 局所の臓器障害がドミノ倒しのように多臓器不全へと進行する. 多臓器不全を, 1) 局所臓器不全か遠隔臓器不全か, 2) PrimaryかSecondaryか, で考えると, 4つのカテゴリーに分類される. 超高齢化社会に突入したわが国では, 免疫力が低下した患者の手術は増加傾向であり, 今後はCARSによる免疫抑制によるSecondary MOFは解決すべき喫緊の課題の1つである. 本稿では, 術後臓器障害の分類を概説するとともに, 今後高齢者が障害を受けやすい筋肉や脳の障害であるICU‐AWと敗血症脳症について紹介し, 今後本邦が直面する新たな術後臓器障害の課題と対策を考察したい.

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© 2021 日本外科代謝栄養学会
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