外科と代謝・栄養
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特集「術後回復を促進させる術前環境の適正化」
術前の休薬・継続による術前環境の適正化
今浦 将治
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2021 年 55 巻 5 号 p. 179-184

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抄録

 医療技術の進歩は手術の低侵襲化を実現し, 高侵襲手術が困難な患者に対しても手術を可能にした. これにより, 高齢患者の手術件数は増加している. 一方で, 高齢患者は, 加齢に伴う臓器機能の低下, 併存疾患の存在, 栄養不良などから術後に予期せぬ合併症を発症することがある. そのため, 術前の呼吸機能訓練や栄養療法など, 手術に向けた準備が重要となる.まさに,本特集のテーマである「術前環境の適正化」が求められる.
 薬はどうか.高齢患者に限らず,さまざまな疾患を合併している患者は,服用している薬剤数も多くなり,周術期の適切な薬剤管理が求められる.抗血栓薬の術前休薬は,代表例である.これは手術を安全に行うために重要だが,不用意な休薬は血栓塞栓症を発症させるリスクを高めてしまう. β遮断薬の急な中断は反跳性高血圧, 虚血症状, 不整脈などの中断症状を引き起こすことがあり, 継続が望ましい. 術前に薬を休止するのか, 継続するのかは患者側と手術側のリスク・ベネフィットを考慮した判断が求められる.

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© 2021 日本外科代謝栄養学会
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