セレン (Selenium;Se) はヒトにとって欠かせない微量元素の1つであり, 体内では抗酸化作用や甲状腺ホルモンの代謝調節などの機能に関わっている. このSeは体内蓄積が少なく, 吸収障害や需要亢進が生じた場合, あるいは異常喪失が続く場合などに, 血中濃度が低値となる低Se血症を呈し、時に臨床症状を伴うSe欠乏症となることがある. 成人も小児でも, 静脈栄養管理でSe投与がない場合や長期経腸栄養管理などでSe含有量の少ない製剤の使用により, 低Se血症やSe欠乏症が生じやすいと認識されている. 2019年に国内初の静脈内投与用のセレン製剤が市販され, 欧米と同様に低Se血症に対してのSe補充ができるようになった. 本稿では, Seに関する基本的知識の確認と, Se欠乏症およびその対策を述べ, 加えてSe製剤についても今後の展望についても解説する.