2001 年 21 巻 1 号 p. 85-89
症例は45歳男性. 主訴は視力低下, 眼球圧迫感, 流涙. 当初, 慢性副鼻腔炎と診断されていたが, C-ANCAは上昇していた. その後両側眼窩内へ腫瘤性病変の進行を認め, ステロイド投与するも左眼失明し, 更に右眼の眼球圧迫感が強くなった. 腫瘤組織生検標本を再検討したところ, ウェゲナー肉芽腫症と診断した. ステロイドとサイクロホスファミドパルス療法の併用により腫瘤は縮小し, 両眼失明を免れることができた. 気道, 腎臓および全身の小血管に病変を来すウェゲナー肉芽腫症の一部に, 腎病変を来さず, 他臓器に限局性の病変を来すサブタイプがあるが, これらはしばしば治療に難渋し, 臨床上問題となる. 今回我々は, 病理組織学的再検討によってウェゲナー肉芽腫症と診断し, ステロイドとサイクロボスファミドパルスを併用することにより両眼失明を免れた症例を経験した. ウェゲナー肉芽腫症の亜型として, その臨床経過ならびに治療において貴重な症例と考え, 報告する.