サルコイドーシス/肉芽腫性疾患
Online ISSN : 1884-6122
Print ISSN : 1345-0565
ISSN-L : 1345-0565
原因不明の肝肉芽腫性疾患 -原発性胆汁性肝硬変を中心に-
中沼 安二大場 一生原田 憲
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 22 巻 1 号 p. 13-18

詳細
抄録

PBC肝に高率にみられる類上皮肉芽腫の病理学的, 免疫病理学的意義を検討し, さらに菌体成分が肉芽腫形成のトリガーになっている可能性を検証した. PBC症例の40.8%に類上皮肉芽腫が見られ, 胆管炎, 門脈域の炎症が高度になるにつれ類上皮肉芽腫の出現頻度も増加した. また, 類上皮肉芽腫の周囲にオステオポンチン陽性の単核細胞や樹枝状細胞様の形態を示すS-100陽性細胞が散見され, 類上皮細胞にはHLA-DRおよびCD1dの発現を認め, 肉芽腫部で活発な抗原提示が行われていると考えられた. 類上皮肉芽腫部から選択的にDNAを抽出し, PCR法にて細菌16S rRNA遺伝子を増幅, 続いてサブクローニング施行後, 塩基配列から菌種の分子生物学的同定を行った. また, Propionibacterium acnes (P. acnes) に特異的なプライマーを用いてPCRを行い, P. acnes遺伝子を選択的に検出した. その結果, 類上皮肉芽腫内に種々の腸内細菌遺伝子, 特にP. acnes, Bacillus, Pseudomonasなどの腸内細菌遺伝子が高率に検出された. 特にP. acnesは, PBCの類上皮肉芽腫から高頻度に検出された. P. acnes遺伝子を選択的に検出したところ, PBCの肉芽腫からは全例に検出され, 対照群に比し有意に高率であった. 以上より, PBCの障害胆管周囲で高率に類上皮肉芽腫が形成され, 同部では活発な抗原提示が行われていると考えられた. また, PBCの肉芽腫部ではP. acnesを代表とした腸内細菌由来の菌体成分が集積しており, 肉芽腫反応の原因 (抗原) になっているものと考えられ, PBCの障害胆管での免疫応答に関与している可能性が示唆された.

著者関連情報
© 日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
前の記事 次の記事
feedback
Top