2002 年 22 巻 1 号 p. 31-35
症例は48歳の男性. 呼吸器症状を認めなかったが検診の胸部単純X線で両側肺門リンパ節腫大と両側上肺野優位の網状粒状影を指摘され, 当院紹介入院となった. 経気管支肺生検と皮下結節生検で類上皮細胞肉芽腫が証明されサルコイドーシスが疑われたが, 慢性ベリリウム症の発症原因になりうる3%未満の低含量ベリリウム合金の使用歴があった. 患者の末梢血と気管支肺胞洗浄液を用いて硫酸ベリリウムによるリンパ球刺激試験を行ったが, 結果は陰性であった. 以上より, この症例を低含量ベリリウム合金の使用者に認められたサルコイドーシスの一例と診断した. 低含量ベリリウム合金は規制対象外であり容易に使用可能である現状を考慮すると, 臨床医がサルコイドーシスと診断する際, 十分にベリリウムの暴露歴 (特ベリリウム合金の使用歴) を聴取し, 少しでも暴露が疑われるならば, ベリリウムリンパ球刺激試験により慢性ベリリウム症の可能性を除外する必要がある.